PCの画面をデジカメで撮ったことのある人、手〜上げて!? とここで叫んだら、何人くらいの方が手をあげられるでしょうか?
何のために?という疑問に答えて、1つ、誰でも痛切に必要とするシーンを考えると、
「重要な原稿を未保存のままマシンがフリーズしたとき」というのが思い浮かびます。
画面コピー(Print Screen, Grab etc.) など一切動かないから、リセット(reboot)して、さきほど入力したのを手早く再入力するには、画面をデジカメで撮る( or 液晶を複写機台に置くかハンディスキャナでスキャンする)しかないでしょう。
「おいおい、そんな特殊な状況、デジタル機器がエラーってときだけ、汚いアナログ経由もやむを得ない、なんてのは当たり前な話で、ズルイよ。もっと普通の面白い状況で、積極的に画面を撮影してるんだろ?」
はい、その通りです。そもそも、デジカメが、高速ドキュメントスキャナより速い、数10分の1秒以下でコピーができてしまう複写機だ、と10年以上前に認識して以来、そのような必要性があったときに使ってまいりました。さらに遡れば、ビデオデッキがうまく録画できない放送をビデオカメラでメモったり、、音声に限って言えば、外部音声出力端子のなかった白黒TVのスピーカの音をラジカセ内蔵マイクで録音したり(小学4年の頃なので37年前)、ということも、必要なら実行してました。
近年は、相手がデジタル機器だろうが、即時にメモる機能が使えないときは、躊躇無く、自分の興味や発想の流れを記録する、ライフ・ログ的な位置づけで、デジカメで撮ることがあります。下記はその一例です:
何かメールで面白い質問をいただき、それに自分の文章を引用して返信したいけど、すぐには適切な内容の取捨選択が終わらない。その際に、メインの引用文の候補をWeb検索でみつけて真ん中に表示し、関連の書籍のタイトルや目次、関連頁を開き、さらに、携帯メールの存在も記録。こうして、次にナレッジワークを再開する際に、その時点での発想の流れ(コンテクスト)を十全に復活できるようにするのであります。
特に、いつ割り込みがかかるかわからない現場で仕事しているとき、一種の発想の煌めきを失わないための「安心」料として、10数秒の準備と、一瞬のシャッターボタン押下の時間は有意義だと思います。たまにはボイスメモも付けますが、、こちらはあまり聞き返す時間が取れることは少ないです。画像やテキストに確実にヒモ付けしたり、その画像やテキストの閲覧時に自動で音声が再生されるような良いソフトを常用できていないせいかもしれません。
アイディアの源泉の多くは、異種の情報源や異分野の知識がぶつかりあってスパークした場にあるようです。だから、異なるデバイス(紙を含む)にまたがって、その作業コンテクストを記録する必要があります。
日本経済新聞&慶應大学の坪田知巳さん著の「2030年メディアのかたち」に、ワーテルローの戦いの勝敗情報は、「投機をやろう!」というコンテクスト、意思をもった者以外には無価値だった、という重要な指摘がなされています。かように、コンテクスト無しでは、多くの情報は無価値になってしまう。
しかるに、殆どのソフトウェアや、デバイスは、それ単体でのログ記録機能しかありません。WindowsやMacなどのマルチウィンドウ記録機能(画面キャプチャや、WSHによるマクロ記録)は、個人の作業コンテクストを記録する上では、他の従来メディアよりずっとマシかもしれません。しかし、ARばりにリアルの物体と混ぜて記録する能力など、カメラ無しには不可能なところがあります。
コンテクストへの紐付けは、情報に意味をもたらす作業です。まさにセマンティックな情報処理といえるでしょう。この紐付け作業を、情報を使いこなす主体を中心に行うことで、人間の知的能力を大きく拡大できるはず。こう信じて、最近数年間、技術開発、製品・サービスの開発を行ってまいりました。メタデータをもたないテキスト情報から5W1Hを自動抽出することで、情報間の関連付け(紐付け、マッシュアップ)は飛躍的に効率化します。
さらに、Mextクリッパーは、Web上の情報を自分で切り取って、「いつ、自分が何に、どこで(URL)注目したか」を素早く記録するツールとして、「主体のログ」を志して開発し、提供しました。他のリソースとの関連付けですが、他の「何時何分」に行った作業のログと統合し、タイムスタンプが近ければ、「統合された主体のログ」として完成に近づくことでしょう(残るは脳内活動の直接記録か。。)。
情報の意味づけ、価値付けを考えたら、主体のログは限りなく重要です。逆に、客体のログ(個々のデバイスやソフトウェア、サービスがはき出すログ)は何なのか? 客体には原則、意志も理由も価値観もありません。 自然現象、たとえば、台風や洪水を考えてみるに、被害者にとっては悲劇ではあっても、自然自体が邪悪な意思をもってたり、「しかしながら」「畜生復讐してやる」「前回はあそこをいじめたから今回はこの地域をいためつけてやろう」など考えて起きているものではありません。真に意思、自意識を備えた人工知能ソフトウェアができるまでは、いかに賢い機器、ソフトウェアであっても同様です。奴ら、何も考えてないのです。奴らがはき出すログの意味を読み取り(なぜそうなるのか?等)、解釈するのは、主体たる人間のお仕事です。
※ソフト開発経験者なら、バグがあったときのエラーメッセージが、真の原因とは似ても似つかぬものであることに慣れっこになっているので、頷かれることと思います。
主体たる自分は、1人しかいません。(よね?同姓同名でない本当の自分が2人いて俺は2カ所に同時に存在できる、という人がいたら名乗り出て下さい) つまり、同時には、1つの場所にしかいられない、という5W1Hの制約があります。また、マルチ思考、並列思考を本当に同時にできる度合いも著しく制限されているので、10数秒以内、 というタイムスパンではほぼ同じテーマで思考や情報処理を行っていることでしょう。その連続、連鎖が主体のログです。自身の思考を中心に、センサーがとらえた刺激(input)を記録し、それをOutputや内部の連想と関連付けて記録する。そして、いつでも必要な際に取り出せる(キーワード検索だけじゃ弱い!)、というのが、ヒトの知的能力を拡大するのに決定的に重要なのではないかと思います。
そのためのセマンティック技術を開発し世に広めたい。ということですが、とりあえずは、自分がかけている眼鏡に、スーパーハイビジョン動画記録機能が備わっている必要がある、ということかもしれません。まだそこまでハード技術が進歩していないので、いまは、CasioのHigh Speedデジカメを極力持ち歩くようにしています。まだまだ理想の記録器には遠いですが、雀のジャンプ歩行がカンガルーのように見えたり、一部、人間の通常の認知能力を超えた記録機能があるので痛快です。
いつでもどこでも記録ができたら、、やはりクラウドに 自動転送して、構造化されたストレージの中で、自由自在に関連検索できるように、ということになりましょうか。OCR,音声認識、そして5W1H抽出や、オントロジーによる(キーワード一致に依存しない)関連付けがフルに機能して、発想を広げてくれることになるでしょう。
これらの仕組みの背後に、さりげなく共有や、知的出会いのソーシャル機能を付ければ、集合知、セレンディピティが効果的に働く確率が上がりそうです。
ヒトの認知能力、知能、発想力を拡大する弱AI(→第44回人工知能基礎論研究会『強AI、認知科学の成果を如何に弱AI、製品開発に反映できるか』)の研究開発は、まだまだこれからです。でも、Webやソーシャル技術、そしてセマンティック・エンジンを含む様々なWeb APIのおかげで、かつてのAIブームの時代よりもはるかに現実味を帯びてきた気がいたします。
カテゴリー: Cloud, Mextractr, business, semantic
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by nomuran こと メタデータ 野村直之