2015年06月11日

これはユニーク! ビッグデータが支える秀逸アプリ 〜感動するとスマホが勝手に写真を撮る

11月は毎年恒例、リクルートさん主催のマッシュアップ・アワードの表彰式を兼ねたファイナル・バトル、懇親パーティがあります。

 マッシュアップ・アワードは、「既にそこにあるビッグデータとの対話(その1)〜破壊的に安く、早くアプリを作る」でご紹介したように、APIを用いたプログラミング・コンテストです。今年は10周年記念大会ということで、全国各地でのハッカソン(24時間とか1泊2日でお題や素材に合わせたアプリをその場で考案して作っちゃうイベント)やアイディアソン(ハッカソンの前半、企画・アイデアまとめまでのイベント)を、1年がかりで開催し続けるという長丁場の最終ステージとなりました。

マッシュアップ・アワードと当社の関わり

 マッシュアップ・アワードを創始したのは八木一平さん(当時リクルート メディアテクノロジラボ、現・大阪ガス)と藤井彰人さん(当時サン・マイクロシステムズ、現・KDDI) 。草創期、私も八木さんに相談されて「Web APIという、完成度が高く利用しやすいプログラミング部品を使って、エンジニアの発想や、高速に作りながら考えることを支援する」といったコンセプトを固めていくのに微力ながら貢献させていただきました。

 第3回では当社としてのマッシュアップ作り支援のため、Web APIを様々に検索し、組み合わせを検討しながら選べるカタログサービス「API比較・マッチングサービス」 を、これ自体をマッシュアップ作品として開発し、部門賞を獲得しました。第4回以降は一貫して、5W1H個人情報検出APIを提供。ほかにもネガポジAPI、感情解析API、願望検索(したいこと検索)APIなど、人工知能的なテキスト解析APIを提供してまいりました。これらのリンク先に、応用作品のリストがあります。

 その後も歴代の事務局さん、ほかのAPIを提供される他社さん、そしてAPIを利用したマッシュアップ作品を作られるエンジニアさんたちと深く長くお付き合いしてきたこともあり、昨年の第9回 MA9では事務局からの挨拶の時間にスピーチをさせていただきました(写真下)。

「きれいやな〜」とつぶやくとスマホが風景をパチリ

 第4回以降、部門賞、協賛企業賞、APIパートナー賞など名前は変わっていますが一貫して、当社提供のAPIを利用した最優秀作品に「メタデータ賞」を授与してまいりました。今回の受賞作品は「Steky Memory」という名のスマホ向けアプリです。

 作者は明石高等専門学校在籍で来年大学院進学予定の松田裕貴さん。本人による作品紹介文を引用します:

美しい景色や美味しい料理…ステキなものに出逢った時、写真に記録を残したい。
でも、画面越しに見るのはもったいないと思いませんか?
Steky Memoryは、あなたの「すごい!」や「美味しい!」といった言葉をトリガーに、写真を自動撮影してくれます。
また、撮影した写真を時系列で振り返ることもでき、クラウド上(OneDrive)で写真をアルバムとして管理することもできます。

 こちらの専用ウェブサイトのリンクから、アンドロイド携帯やタブレットでダウンロードして使ってみることができます。友だちと街を散策している時などの自分の会話を常時音声認識させ、それを感情解析APIで解析し続け、言葉に感動や感情の動きが含まれていることを検出した瞬間、自動でシャッターを切ります。

 リアルの発話に含まれた感情を検出してカメラのシャッターを切らせる、という自由な発想に驚きました。標準で写真と言葉をクラウドに保存していくので、ライフログから感動シーンだけを切り取った「感動シーン・ログ」ともいえる仕組みである、と評価できるでしょう。

 全APIパートナー賞のページから、授賞理由、コメントを引用します:

サーバーサイド・テキスト解析系API利用としては珍しいスマホアプリでした。 美しいデザイン、仕上げ、完成度もさることながら、音声認識を経て感動の類の言葉が発せられたことを感情解析APIで判定し、そのときだけ、その瞬間シャッターが切られるという斬新かつシンプルなインタフェースに驚きました。 写真、認識結果、日付時刻などのメタデータ一式をクラウドに即保存というのも今日的であり、ユーザの手間をかけさせまいとする配慮も素晴らしいです。 日々の気持ちの動き、感動の体験をすべて記録する、「幸福なライフログ」という印象を持ちました。

 当社の松田圭子取締役が松田裕貴さんに贈呈したメタデータ賞(写真上)の中身ですが、ラズベリーパイという名の超小型コンピュータ・キットに、Bluetoothでスマホのシャッターを切る装置が一脚、そして、スマホカメラのレンズに取り付ける魚眼・広角の各アダプタとクローズアップレンズ、という盛り合わせです。彼のプロフィールやフェイスブックでの活動内容を拝読し、今後もユニークな作品、それもハードウエア込みの面白い作品を作り続けていってほしい、との願いを込めての選択でした。

 感情解析APIの利用作品には毎年ユニークで素敵な作品が多いのです。ご紹介すると、今回惜しくも賞を逃したソーシャル安否確認、恋文、さらに昨年の作品群はこちらです。

 そして一昨年は、首都大学東京・ネットワークデザイン研究科・渡邉英徳研究室の大学院生・原田真喜子さんによる コトバノモリが全作品中の準優勝に相当する優秀賞を受賞。この作品は、ツイッター上で、商品やブランド名の評判がどのような感情的評価で分布しているかを一目で把握できた感じになれるということで、マーケティングやマーケットリサーチ関係者にも大変好評です。学会等でも受賞しており、詳細は、査読付きの学術論文“特徴語抽出と感情メタデータ付与によるウェブ上の語彙の概念の視覚化”(原田真喜子,渡邉英徳,映像情報メディア学会誌第68巻第2号,page J78-J86)で説明されています。なお、この年に感情解析APIを活用したマッシュアップ作品の一覧はこちらです。

音楽ビッグデータを活用して、人工知能がDJに

 さて、10年前の草創期から、マッシュアップ作品の多くがGoogle Maps APIを使っていました。先の連載の通り、構造化されたビッグデータを背後に備えたAPIを使うだけで、ビッグデータ応用システムになるという次第です。

 今回の最優秀作品は、音楽ビッグデータを活用した作品です。
  ●「無人IoTラジオ Requestone (リクエストーン)」

 メールやツイッターなどでBGMのリクエストを受け付け、あたかもDJのようにリクエスト内容を機械が読み、YouTubeAPIから取得してきた曲のタイトルを音声で読み上げ、音楽を流すという無人のラジオ・リクエスト放送サービスです。

 曲のリクエストだけでなく、例えばイベントの感想などをRequestone宛に送ると、メール文面の雰囲気を言語解析し、その雰囲気に合わせた口調で読み上げ(VoiceTextAPIを利用、音声垂れ流し)、さらに雰囲気に合わせた曲をGracenoteAPIのムード情報から選曲して曲をかけることもできるとのこと。上記の作品紹介ページから作者自身のコメントを引用します:

目玉の機能は、放送に対する”リクエスト”。
あなたの面白エピソードや、ちょっと人には言えない相談、今聴きたい曲や気分など、昔懐かしの“ハガキ職人”な気分になって、Requestoneにメールを送ってみてください。
VoiceText DJ.Edi が、あなたのメールを読み上げて放送をお届けしてくれ、ピッタリの曲を推薦してくれますよ。
また、IoTであることを活かして、ハードウェア連携機能を搭載。
放送中に「いいね!」を届けることが出来るボタンや、センサーから周辺情報を取得し、災害放送などの緊急連絡もサポートします。

 テキスト解析して様々な単語を抽出したものを、Gracenoteの音楽メタデータAPIに投げると、各楽曲についてジャンル、アーティストの活躍年代・地域や経歴、ムードなどの属性情報と照合してくれます。この中から適合度の高かった楽曲を曲目推薦してくれる、と思われます。Gracenoteとは初耳の方もいらっしゃるかもしれません。音楽CDをパソコンにセットするとあーら不思議、どこからともなくアルバム情報やトラック情報が補われて便利ですが、あの背後で動いている仕組みです。

 Gracenoteのことを巨大な音楽ビッグデータと呼んだりもしますが、正確には音楽そのものではないので、全世界の音楽メタデータを収集したデータべースを持ち、ネットを介して情報提供しているサービス、と言えるでしょう。比較的最近、その仕組みをAPIとして、ソフトウエアや機械から呼び出して使えるように公開し始めたということになります。

 再生して流すべき音楽データそのものは、次の2つのAPIから取得します。YouTubeAPI、melocyAPI  また、音声合成(テキストをしゃべる)APIを介して読み上げるべき関連文章を取得するのに、朝日新聞記事APIを使っています。

 これらも、データ収集の方法こそそれぞれ違いますが、ビッグデータを構造化して提供しているAPIにほかなりません。10年前の、単純に地図上に何でもかんでも置いていく類のマッシュアップ・アプリと比べて、なかなか賢そうなひねったアイデアでビッグデータを活用している、と言えるのではないでしょうか。

 今回のマッシュアップ・アワード(MA10)では、ほかにも巨大な音楽メタデータの力を借りた面白いアイデアの作品があります。たとえば、これ: intempo

      ■使い方

  1. 出発駅と目的駅を入力し、自動的に表示される候補から乗りたい電車を選択します。
  2. しばらく歩くと、アプリが一定距離内での歩幅や歩数を自動計算します。
  3. 流れる音楽のテンポで歩けば、出発時刻に間に合うようにちょうどよく駅につきます。

 詳細は、上記リンク先におまかせするとして、音楽のリズム、テンポ(速度)という属性を活用し、それに合わせて歩いていくと、ぴったりの時間に駅に到着、というアイデアがナイスだと思います。少し似たアイデアに、MA5の優秀作品、キャストオーブンというのがあります。

 電子レンジの温め時間の長さにピッタリの動画を、YouTubeから探してきて自動で再生してくれる、ということで、探索の手がかりとなるデータが秒数だけというあたり、まだまだシンプルだったといえるでしょう。

 次回は、ユーザーが毎日のように使ってせっせとデータをサーバーに送ると、その結果、次第にビッグデータが出来上がっていくタイプの作品を紹介したいと思います。

タグ:ビジネス
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