2015年06月25日

ソーシャル要素を取り入れてビッグデータのアプリは魅力的になる 〜健康増進、ドライブの友、犯罪捜査支援にも

 前回、ビッグデータをフル活用したアプリとして、Mashup Award 10で最優秀賞を受賞した「無人IoTラジオ Requestone (リクエストーン)」や、「intempo」をご紹介しました。ビッグな音楽メタデータ「グレースノート」を活用して、演奏時間をはじめとする様々な条件、キーワードの合致等を見て選曲するところがミソでした。

 メタデータ賞を受賞した「Steky Memory」は、クラウド上で写真を、自分の感動の言葉付きでアルバムとして管理できる点が「今日(こんにち)的」な特色の1つでした。これをもう1歩進めて、登録ユーザーみんなが投稿・記録ができて、自分自身の目標管理や進捗管理が可能なばかりか、友人・仲間と一部データを共有して互いに励みになる、というソーシャル要素を入れたアプリも受賞作の中にあります。

首都大学東京・渡邉研究室の作品群

 Mashup Awardに実力勝負で殴り込みをかける大学の先生や大学院生は数少ないですが、その中で、首都大学東京・ネットワークデザイン研究科の渡邉英徳先生とその研究室は例年上位に入り、様々な賞を受賞されています。

 前回記事では、一昨年のMA8で優秀賞(準優勝)に輝いた 「コトバノモリ」の感情解析応用ポイントなどをご紹介しました。制作者の原田さんは、今回のMA10ではご自身の体験を生かして、駅における妊産婦さんの声と一般ユーザーの声をマッチングさせる「Babeem」を作り、Geek Girls部門賞を受賞。全体ランキングの中でも FINAL進出の栄誉に輝きました。

 渡邉先生自身も主力で加わった作品としては、コトバノモリの前年MA7に「東日本大震災アーカイブ」を出品して優秀賞を獲得(準優勝)。「マッシュアップ技術を活用することで、社会に対して何ができるのか提示した、これまでの Mashup Awards の金字塔的な作品」とまで高く評価されました。

 MA8では「東日本大震災マスメディア・カバレッジ・マップ」で、震災直後にマスメディア報道が伝えた情報と,現実の被災状況や支援を必要としていた地域など,インターネット・ユーザーによってボトムアップで提供された情報を,デジタル・アース上に統合して可視化。その結果をもとに,非常時にマスメディアとオウンメディアを相補的に活用するためのシステムとインターフェイスのデザイン手法を提案されました。災害直後の混乱の中、マスメディアとソーシャルメディアを立体地図、航空写真上で統合してより適切な判断を支援するという、国民の命を守る社会的意義の大きなアプリだ、といえるでしょう。

 これらの開発技法、ノウハウを広める意味で、共著で、書籍『Google Earthアプリケーション開発ガイド』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)も出しておられます。もう1冊、一般向けにデジタルアーカイブを紹介し、その意義を説いた本として『データを紡いで社会につなぐ デジタルアーカイブのつくり方』(講談社現代新書)があります。

 渡邉研究室の様々な作品は、そのデータ作りに協力した地元の人をはじめ、様々な人々に使われ、時には研究室メンバーが積極的にインタビューに出向いたりして作品にフィードバックしているところが一味違います。作品と社会とのつながりに常に気を配り、ビッグデータやオープンデータを単に即物的に扱うのではなく、データの提供者、利用者にどう貢献し、引いてはより良い社会の実現にどう寄与するかを考えている様子、その背景が上記の新書本から伝わってきます。

公式気象情報の空白を埋める台風ウォッチアプリ

 今年のMA10では、「台風リアルタイム・ウォッチャー」がCivic Tech部門賞(by Code for Japan)を受賞しました。Code for Japan Summitで行われたCivic Tech部門賞決勝で最優秀賞に選ばれた作品です。

 公式情報としては、既に整理、構造化された国立情報学研究所の「デジタル台風:台風画像と台風情報」を用い、非公式情報としてはウェザーニューズの会員が提供する「減災リポート」を用いています。その名の通りの作品ですが、何よりパソコンで実際に使ってみることをお勧めいたします。概要紹介パネル原稿で概要を、GIGAZINEによる解説記事で使い方を、ハフィントン・ポスト記事にて制作者自身による解説、評価内容をご参照ください。

 「減災リポート」のデータは、前々回の記事で解説した「東日本大震災マスメディア・カバレッジ・マップ」と同様、地面から鉛直方向に時間軸を設定し、時空間的なビジュアライゼーションを施しています。これによって、各地における災害の推移がわかります。

 その一例として、沖縄の様子を以下に示します。下から上に向けて時間が経過しています。台風通過前後で、アイコンの色が「緑(災害に対する備え)」→「赤(強風被害)」→「青(水害)」と変化していることがわかります。


 「TV、ネットの公式サイト(気象庁など)ではこう言っているが実際どれくらい酷くなりそうなんだろう? 一足先に暴風圏内に入った隣町の人は予想以上だったと言っているかなぁ?」などの疑問に、ビジュアルで一瞥できるように答えてくれる仕組みは、斬新といえるでしょう。Google Earthという立体地理情報ビッグデータの基盤の上に、分量が多すぎて人間が読み切れない非公式情報を公式情報と併せてマッシュアップしたことで、命が救われるということも出てくることでしょう。

 首都大学東京の理事長は川淵三郎・日本サッカー協会会長(1964年東京五輪代表選手)です。2020年東京五輪に向けて、お膝元の大学としてますます社会的意義、インパクトの大きな斬新なビッグデータ活用アプリを作っていかれることと思います。

車の通行情報データの応用例:犯罪捜査支援や車内娯楽

 災害ばかりでなく事故への対応や、犯罪の捜査支援にもビッグデータが活用できることを示してくれたマッシュアップ作品があります。MA10の「目撃車 by METY」 がその例です。

目撃車とは:
事件や事故(当て逃げなど)があった時、目撃者探しが急務ですよね。
目撃車サポーターに登録している車のオーナーは、いつ、どこを走っていたかを、目撃者捜しに協力するために提供しています(トヨタITC クルマ情報API利用)。目撃車とは、事件や事故があったその当時、その場所を走っていた車のオーナーをデータベースから検索し、電話やメールで目撃情報を問い合わせることができるサービスです。

 ネガティブな事態からのリカバリだけでなく、楽しさを増す方向でクルマ情報APIを活用したアプリもありました。昨年のMA9の優秀賞作品「Quiz Drive」です。

 みんなでドライブした時、渋滞などを自動検知して、アプリがクイズを出してきます。仲間でドライブする時の新たな楽しさを創造した作品といえます。間違った回答をした時の罰ゲームまで用意されている周到さ。ビッグデータの1つといえるカーナビ相当の情報に大きく頼りつつ、場所情報(緯度と経度)だけで決まるのではない点など飽きが来ず、実際に使い続けていってほしいという実用化への思いが感じられました。動画もご覧ください。

公式動画:こちら
利用シーンの実写動画:こちら

 交通関係で実用化志向のアプリといえば、同じくMA9で優秀賞とCivic Hack賞を受賞したスマホアプリ「バスをさがす福岡」(画像はこちら)に言及しないわけにはいきません。

 バス交通が非常に発達した福岡では、あまりの路線の充実のため、最適な解を選ぶのが難しかった。そこへ、最新の渋滞情報も含めてどのバスに乗ればいいか、乗ったら何時に着くかなどをマッシュアップ。

 「バスをさがす 福岡」は、今から乗るバスを知りたい時、出発地点と目的地のバス停を指定することで「どの路線番号のバスに乗ればいいか」「目的地に何時に着くのか」「運賃はいくらか」「待っているバスは、今どの辺りか」「バスがどのバス停に止まるのか」を素早く確認することができます。

 この動画の開発者の言葉から、利用者の不安を取り除くことを徹底的に追求したことが伝わってきます。開発の経緯を聞くと、オープンデータはどうあるべきか(更新頻度)などの問題意識も伝わってきます。

 このマッシュアップ・アプリがいかに実用的だと評価されたか。何よりの証明は、今からちょうど1年前のこのプレスリリース「『バスをさがす 福岡』が生まれ変わって、『にしてつバスナビ』へ!」にとどめを刺すでしょう。

 元々、超小さくて若い会社であるからくりものが「勝手に」開発・リリースしたアプリでしたが、西鉄公式アプリのベースとして採用されたという経緯は非常に珍しく、地元福岡でも驚きを持って迎えられました。

 最初に西鉄へご挨拶に伺った際、まるで職員室に向かう学生のように「あー絶対怒られる」と思っていた我々を暖かく迎えていただき、まさかの公式化へ導いてくださった西鉄自動車事業本部や西鉄情報システムの皆様、また、出会いのチャンスを設けていただいた皆様にも大変感謝しております!

 Mashup Awardへの出品作品の多くがアイデア先行だったり、実用というにはデータ量も機能の整理もまだまだで、早期プロトタイプとしか言いようのない作品が主流です。そんな中、商用サービスにほぼそのまま採用された稀有な例として、歴史に残ることと思います。

みんなで記録するライフログも集まればビッグデータ

 健康管理やダイエット系のアプリで、自分の食べたものや運動の記録、そして、体重をはじめとする健康情報を入力すると、グラフや助言、励ましの声が得られるようなサービスが人気を集めています。たとえば「あすけん」はよくある発想としてソーシャル化し、各人がOKした範囲の情報がほかの会員に公開され、参考に供されたりしています。もちろん、大人数の大量の生データを解析して、助言が有効だったか等、フィードバックしてシステムを日々改良していることと思われます。

 MA9 の優秀作品の中でこのタイプの代表格として目を引いたのが「毎朝体操」です。コンテンツとして、「スマホを持ってラジオ体操」してもらい、それを採点し、視覚化するというなかなかユニークな発想をした点だけでも高評価に値すると思いますが、加えて実にきめ細かな作りこみに感心させられます。


 自ら体操して使い込んで改良するとともに、多数のユーザーの声を聞いて改善してきた痕跡が随所に認められます。体操着で発表を行い、最後に「やりますよね!?」といって会場全体を巻き込んでラジオ体操させたプレゼンの手腕も見事でした。

 この「毎朝体操」が蓄積したデータを解析すると、いったいどんな分析結果が得られるのでしょうか。運動しているのにちっとも痩せないとこぼす人が実はカロリー消費の少ないサボった動きをしていることが順当に判明するのか、あるいは逆に意外な方法で楽に短時間体操するだけでダイエットできるコツを示唆してくれるようになるのか。まずは、楽しさと、ついついやってしまう“習慣性”を備えたアプリの開発に期待しましょう。測定が先か、効果が先かの問題はマネタイズに苦労するベンチャーに任せて、と一般ユーザーは気楽に構えていても良いのかもしれません。

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2015年06月11日

これはユニーク! ビッグデータが支える秀逸アプリ 〜感動するとスマホが勝手に写真を撮る

11月は毎年恒例、リクルートさん主催のマッシュアップ・アワードの表彰式を兼ねたファイナル・バトル、懇親パーティがあります。

 マッシュアップ・アワードは、「既にそこにあるビッグデータとの対話(その1)〜破壊的に安く、早くアプリを作る」でご紹介したように、APIを用いたプログラミング・コンテストです。今年は10周年記念大会ということで、全国各地でのハッカソン(24時間とか1泊2日でお題や素材に合わせたアプリをその場で考案して作っちゃうイベント)やアイディアソン(ハッカソンの前半、企画・アイデアまとめまでのイベント)を、1年がかりで開催し続けるという長丁場の最終ステージとなりました。

マッシュアップ・アワードと当社の関わり

 マッシュアップ・アワードを創始したのは八木一平さん(当時リクルート メディアテクノロジラボ、現・大阪ガス)と藤井彰人さん(当時サン・マイクロシステムズ、現・KDDI) 。草創期、私も八木さんに相談されて「Web APIという、完成度が高く利用しやすいプログラミング部品を使って、エンジニアの発想や、高速に作りながら考えることを支援する」といったコンセプトを固めていくのに微力ながら貢献させていただきました。

 第3回では当社としてのマッシュアップ作り支援のため、Web APIを様々に検索し、組み合わせを検討しながら選べるカタログサービス「API比較・マッチングサービス」 を、これ自体をマッシュアップ作品として開発し、部門賞を獲得しました。第4回以降は一貫して、5W1H個人情報検出APIを提供。ほかにもネガポジAPI、感情解析API、願望検索(したいこと検索)APIなど、人工知能的なテキスト解析APIを提供してまいりました。これらのリンク先に、応用作品のリストがあります。

 その後も歴代の事務局さん、ほかのAPIを提供される他社さん、そしてAPIを利用したマッシュアップ作品を作られるエンジニアさんたちと深く長くお付き合いしてきたこともあり、昨年の第9回 MA9では事務局からの挨拶の時間にスピーチをさせていただきました(写真下)。

「きれいやな〜」とつぶやくとスマホが風景をパチリ

 第4回以降、部門賞、協賛企業賞、APIパートナー賞など名前は変わっていますが一貫して、当社提供のAPIを利用した最優秀作品に「メタデータ賞」を授与してまいりました。今回の受賞作品は「Steky Memory」という名のスマホ向けアプリです。

 作者は明石高等専門学校在籍で来年大学院進学予定の松田裕貴さん。本人による作品紹介文を引用します:

美しい景色や美味しい料理…ステキなものに出逢った時、写真に記録を残したい。
でも、画面越しに見るのはもったいないと思いませんか?
Steky Memoryは、あなたの「すごい!」や「美味しい!」といった言葉をトリガーに、写真を自動撮影してくれます。
また、撮影した写真を時系列で振り返ることもでき、クラウド上(OneDrive)で写真をアルバムとして管理することもできます。

 こちらの専用ウェブサイトのリンクから、アンドロイド携帯やタブレットでダウンロードして使ってみることができます。友だちと街を散策している時などの自分の会話を常時音声認識させ、それを感情解析APIで解析し続け、言葉に感動や感情の動きが含まれていることを検出した瞬間、自動でシャッターを切ります。

 リアルの発話に含まれた感情を検出してカメラのシャッターを切らせる、という自由な発想に驚きました。標準で写真と言葉をクラウドに保存していくので、ライフログから感動シーンだけを切り取った「感動シーン・ログ」ともいえる仕組みである、と評価できるでしょう。

 全APIパートナー賞のページから、授賞理由、コメントを引用します:

サーバーサイド・テキスト解析系API利用としては珍しいスマホアプリでした。 美しいデザイン、仕上げ、完成度もさることながら、音声認識を経て感動の類の言葉が発せられたことを感情解析APIで判定し、そのときだけ、その瞬間シャッターが切られるという斬新かつシンプルなインタフェースに驚きました。 写真、認識結果、日付時刻などのメタデータ一式をクラウドに即保存というのも今日的であり、ユーザの手間をかけさせまいとする配慮も素晴らしいです。 日々の気持ちの動き、感動の体験をすべて記録する、「幸福なライフログ」という印象を持ちました。

 当社の松田圭子取締役が松田裕貴さんに贈呈したメタデータ賞(写真上)の中身ですが、ラズベリーパイという名の超小型コンピュータ・キットに、Bluetoothでスマホのシャッターを切る装置が一脚、そして、スマホカメラのレンズに取り付ける魚眼・広角の各アダプタとクローズアップレンズ、という盛り合わせです。彼のプロフィールやフェイスブックでの活動内容を拝読し、今後もユニークな作品、それもハードウエア込みの面白い作品を作り続けていってほしい、との願いを込めての選択でした。

 感情解析APIの利用作品には毎年ユニークで素敵な作品が多いのです。ご紹介すると、今回惜しくも賞を逃したソーシャル安否確認、恋文、さらに昨年の作品群はこちらです。

 そして一昨年は、首都大学東京・ネットワークデザイン研究科・渡邉英徳研究室の大学院生・原田真喜子さんによる コトバノモリが全作品中の準優勝に相当する優秀賞を受賞。この作品は、ツイッター上で、商品やブランド名の評判がどのような感情的評価で分布しているかを一目で把握できた感じになれるということで、マーケティングやマーケットリサーチ関係者にも大変好評です。学会等でも受賞しており、詳細は、査読付きの学術論文“特徴語抽出と感情メタデータ付与によるウェブ上の語彙の概念の視覚化”(原田真喜子,渡邉英徳,映像情報メディア学会誌第68巻第2号,page J78-J86)で説明されています。なお、この年に感情解析APIを活用したマッシュアップ作品の一覧はこちらです。

音楽ビッグデータを活用して、人工知能がDJに

 さて、10年前の草創期から、マッシュアップ作品の多くがGoogle Maps APIを使っていました。先の連載の通り、構造化されたビッグデータを背後に備えたAPIを使うだけで、ビッグデータ応用システムになるという次第です。

 今回の最優秀作品は、音楽ビッグデータを活用した作品です。
  ●「無人IoTラジオ Requestone (リクエストーン)」

 メールやツイッターなどでBGMのリクエストを受け付け、あたかもDJのようにリクエスト内容を機械が読み、YouTubeAPIから取得してきた曲のタイトルを音声で読み上げ、音楽を流すという無人のラジオ・リクエスト放送サービスです。

 曲のリクエストだけでなく、例えばイベントの感想などをRequestone宛に送ると、メール文面の雰囲気を言語解析し、その雰囲気に合わせた口調で読み上げ(VoiceTextAPIを利用、音声垂れ流し)、さらに雰囲気に合わせた曲をGracenoteAPIのムード情報から選曲して曲をかけることもできるとのこと。上記の作品紹介ページから作者自身のコメントを引用します:

目玉の機能は、放送に対する”リクエスト”。
あなたの面白エピソードや、ちょっと人には言えない相談、今聴きたい曲や気分など、昔懐かしの“ハガキ職人”な気分になって、Requestoneにメールを送ってみてください。
VoiceText DJ.Edi が、あなたのメールを読み上げて放送をお届けしてくれ、ピッタリの曲を推薦してくれますよ。
また、IoTであることを活かして、ハードウェア連携機能を搭載。
放送中に「いいね!」を届けることが出来るボタンや、センサーから周辺情報を取得し、災害放送などの緊急連絡もサポートします。

 テキスト解析して様々な単語を抽出したものを、Gracenoteの音楽メタデータAPIに投げると、各楽曲についてジャンル、アーティストの活躍年代・地域や経歴、ムードなどの属性情報と照合してくれます。この中から適合度の高かった楽曲を曲目推薦してくれる、と思われます。Gracenoteとは初耳の方もいらっしゃるかもしれません。音楽CDをパソコンにセットするとあーら不思議、どこからともなくアルバム情報やトラック情報が補われて便利ですが、あの背後で動いている仕組みです。

 Gracenoteのことを巨大な音楽ビッグデータと呼んだりもしますが、正確には音楽そのものではないので、全世界の音楽メタデータを収集したデータべースを持ち、ネットを介して情報提供しているサービス、と言えるでしょう。比較的最近、その仕組みをAPIとして、ソフトウエアや機械から呼び出して使えるように公開し始めたということになります。

 再生して流すべき音楽データそのものは、次の2つのAPIから取得します。YouTubeAPI、melocyAPI  また、音声合成(テキストをしゃべる)APIを介して読み上げるべき関連文章を取得するのに、朝日新聞記事APIを使っています。

 これらも、データ収集の方法こそそれぞれ違いますが、ビッグデータを構造化して提供しているAPIにほかなりません。10年前の、単純に地図上に何でもかんでも置いていく類のマッシュアップ・アプリと比べて、なかなか賢そうなひねったアイデアでビッグデータを活用している、と言えるのではないでしょうか。

 今回のマッシュアップ・アワード(MA10)では、ほかにも巨大な音楽メタデータの力を借りた面白いアイデアの作品があります。たとえば、これ: intempo

      ■使い方

  1. 出発駅と目的駅を入力し、自動的に表示される候補から乗りたい電車を選択します。
  2. しばらく歩くと、アプリが一定距離内での歩幅や歩数を自動計算します。
  3. 流れる音楽のテンポで歩けば、出発時刻に間に合うようにちょうどよく駅につきます。

 詳細は、上記リンク先におまかせするとして、音楽のリズム、テンポ(速度)という属性を活用し、それに合わせて歩いていくと、ぴったりの時間に駅に到着、というアイデアがナイスだと思います。少し似たアイデアに、MA5の優秀作品、キャストオーブンというのがあります。

 電子レンジの温め時間の長さにピッタリの動画を、YouTubeから探してきて自動で再生してくれる、ということで、探索の手がかりとなるデータが秒数だけというあたり、まだまだシンプルだったといえるでしょう。

 次回は、ユーザーが毎日のように使ってせっせとデータをサーバーに送ると、その結果、次第にビッグデータが出来上がっていくタイプの作品を紹介したいと思います。

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