2015年05月27日

ビッグデータが支える、25年ぶりの人工知能ブーム 〜ロボット、自動通訳、IBMの「次の柱」もビッグデータの賜物


米グーグル、米フェイスブック、米ツイッターなど大手ネット企業が、大規模なユーザー作成コンテンツを構造化して利便性を高めたビッグデータ活用を奨励し、特にAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)の形で公開することにより、企業や団体の広義のマーケティング活動を変革してきた事例を紹介してまいりました。

 大量の構造化データは、一種の「知識」として様々な入力情報に多彩な加工(いわゆる有用情報の抽出、発見、集約などを含む)を施して出力させるのに役立ちます。この情報加工・生産を行う「知識」の役割モデルについては、以前の記事『ビッグデータが変えた「知識よりもデータが偉い」?』に簡潔に図解させていただきましたのでご参照ください。

半導体事業に代わるIBMの柱は「ツイッター分析」!

 今月見聞したビジネス関係の記事で最も感慨深かったのが、日経コンピュータ・浅川直輝記者によるこの記事です。『60年続けてきた半導体製造を手放すIBM、「Watson」に社運を賭ける』

 単に米IBMが米ツイッター社と提携した、というニュースリリースととらえた向きもあったようですが、その実態は、IBMの主力事業の1つの転換でした。

 人工知能的なビッグデータ解析、特に膨大な非構造情報の代表格であるツイッターのテキスト情報を解析して、経営指針を左右する発見や仮説の検証を行い、生データ分析に基づくコンサルティングサービスを行う。これは、弊社・メタデータ株式会社がやっていることとあまり変わりません!

 メタデータ社のような零細ハイテクベンチャーはもちろん、つい最近上場承認されたデータセクションさん(橋本大也さん、澤博史さん、おめでとうございます!)、一足早く上場されたホットリンクさんのように、売り上げが数億〜10億円規模の会社であっても、一般ビジネスマンの方々の感想は「なるほど新産業の芽生えなのかもしれませんね。しばらくはニッチの新規ビジネスでしょうが」というものにとどまりそうです。

 しかし、かつて「産業のコメ」とまで言われた半導体事業に取って代わり、次世代の高収益事業であるビジネス・コンサルティングに軸足をシフトしたIBMが中核事業に位置付けた、というニュースは、ビジネスマンの方々にとっても驚嘆に値するのではないでしょうか。上記リンク先記事1ページ目の下記引用と、3領域の重なりを示すベン図をご覧ください:

“さらに注目すべきは、ツイッターとの提携が、IBMが注力領域とする「データ」「クラウド」「エンゲージメント(モバイル+ソーシャル)」といった3領域すべてに関わる案件という点”

 本記事2ページ目の『無償版も提供、分析サービス利用者のすそ野を広げる』などは、零細ベンチャーとして脅威に感じる面もなくはないですが、それ以上にあのIBMが本腰を据えて主力事業と位置付けたくらい、まさに広大な潜在市場であることが世界に広く周知されたことはありがたいです。この連載が一貫して唱えている、「生データ(事実)に基づく俊敏な経営を目指して、より高度な分析、判断に注力すべし」と同じことを巨大な広報力で発信してくれて、多くの企業経営者のマインドが一斉に切り替わってくれることが期待されるからです。

 IBM自身の行く末が本当にこの舵切りにかかっている、とIT proの中村編集長も語っています。『IBMを変えるのは、Watsonかイェッター氏か』

 半導体事業売却の概要と、PCサーバー事業をLenovo社に売却など1月の発表についてはこちらの記事『IBM、赤字の半導体事業を15億ドル支払ってGLOBALFOUNDRIESに譲渡』にあります。やはり不退転の決意であることが伝わってきます。

クリックなしのネットショッピングをロボットが実現

 いくらIBMといえども、B2Bすなわち企業向けのビジネスですから、一般消費者として、ビッグデータの分析、活用が浸透してくるのかは水面下、背後の動きであり、いまひとつピンとこないかもしれません。

 一方これが、以前『ソーシャル・マシンの主役=アバター、対話ロボット』にてご紹介した、ウェブページ上の対話ロボット (上の図)だったり、ソフトバンクさんの感情ロボットPepperとなると、俄然幅広く、個人の興味をかきたててくれます。

 Pepperは少なくとも当面は店頭設置からお目見えするようですが、米アマゾンのEchoちゃんは、199ドル(お急ぎ便プライム会員なら99ドル)でいきなり家庭の中に入ってきます。実体は小さな黒い茶筒。時間や天気のことを聞いたら答えてくれるし、エベレストの標高を答えてくれたり、「(この音楽)ちょっとストップ!」などと言いながら対話的に好きなBGMを選んでリビングルームに流すのに付き合ってもくれます。もちろんアマゾンですからお買い物を指示することもできます。ギフトラッピングの指定等も受け付けてくれて、後は商品の到着を待つばかり。具体的な利用イメージ、機能の概要については、このリンク先記事の埋め込み動画をご覧ください。

 クイズ番組「ジョパディ」でクイズ王を破った初代ワトソンコンピュータは、インターネットにつながっていませんでした(リンク先記事)。しかしアマゾンのEchoは、動画中の子供が「全知全能みたい!」と驚愕しているように、インターネットにつながって、百科事典的な知識(構造化されたビッグデータの一種です!)を駆使して回答します。クラウド化された “頭脳” の大きな利点の1つに「常時最新の情報、知識にアップデートしつつリアルタイムで状況を教えてくれる」というのがあります。DVDカーナビがクラウドカーナビに到底かなわない(リンク先記事)のも、このメリットのためです。

リアルタイムの「自動通訳電話」がついに実現へ

 私が社会人になった1980年代に、NECの中興の祖、小林宏治会長が C&C (Computer & Communication) の象徴として必ず実現する、と宣言したプロダクトが自動通訳電話でした。私自身も音声認識、機械翻訳、音声合成の3つの要素技術を集約したC&C情報研究所メディアテクノロジ研究部の研究員として機械翻訳部分を担当していました。

 バブル経済の破綻や、ニューラルネット計算量爆発の破綻(後者はまだ未解決ですのでディープ・ラーニングには要注意!)などにより、いわゆるAIブームが終焉を迎える少し前から統計的手法、すなわち大量の生データに基づく音声処理、自然言語処理の研究が発展し始めました。

 人間の頭で考えて編集された膨大な文法、訳し分けノウハウを集積したルールベース機械翻訳などに取って代わり、あるいは補完する形で「なぜか分からないけどこう表現される」というレベルの膨大な言語知識が(半)自動学習された“事例ベース機械翻訳”として次々と実用化されていきました。まさに、ビッグデータ活用の音声処理、言語処理です。

 私の古い知人、米国の友人で、IBMやマイクロソフトに勤めた技術者の中には元言語学者もいます。言語学者の大半はノーム・チョムスキーの提唱した普遍文法の流れを汲んで、極めて抽象度の高い研究、すなわち英語、日本語のみならず数千のすべての言語に共通する少数の基本原理と、その差異を生み出すパラメータを探求する理論科学に従事しており、上記1980年代の人工知能研究時代のルールベース、知識処理以上に紙と鉛筆、頭脳だけで勝負しているところがありました。

 しかし、その元言語学者がIBMやマイクロソフトにて大量の実例、すなわちビッグデータ活用の自然言語処理に転向したおかげで、翻訳精度は目に見えて向上し始めました。その到達点の1つとして、米マイクロソフトのスカイプがリアルタイム自動通訳機能を提供開始、というニュースが最近流れました。『MicrosoftがSkypeで自動通訳のテスト開始へ―Live Translator、登録受付中』

 YouTubeのリアルタイム音声認識、自動翻訳字幕に馴染んでこられた方も、もし自動通訳電話が使えるようになったら世界の見知らぬ人と会話してみたいと思い、新しい世界が開けるかもしれません。私自身、英語・日本語間では使おうとは思いませんが、スワヒリ語やタガログ語しか話せない人からその場で何か情報を引き出しなさい、と言われたら、リアルタイム自動通訳に頼るしかないでしょう。このような機能が必要不可欠になる時代の到来をこの目で見られるよう、また、それに貢献できるよう、引き続き、楽しく精進してまいりたいと思います。


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2015年05月13日

「狭告」の効果が激増するクリエイティブの条件とは? 〜既にそこにあるビッグデータとの対話(その5)

機械の進化で、人はますます“クリエイティブ” に専念

 上の見出しは普通に読めば、機械が雑用、単純な事務処理、情報処理を代行してくれることで人間は人間にしかできない人間らしい創造性(クリエイティビティ)溢れる活動に集中できるようになる、と解釈されるでしょう。情報爆発が進行する中、人が読み切れない大量の受信メールやウェブ記事をソフトウエアが代読してくれ、わずかに含まれていた有用そうな情報(例えばアドレス帳や営業データベースに含まれる姓名と一致した人物の講演案内)だけをピックアップして提示してくれる機能など、2020年頃には当たり前に使われるようになっているのではないでしょうか?

 日経ビジネスオンラインに以前、私がインタビューされた記事「やる気が出て仕事が楽しくなり、出世の手伝いもしてくれるソフトとは?」では、このように機械が膨大な単純読解作業などを代行してくれて、「人はますます“クリエイティブ”に」シフトする未来ビジョンが描かれています。

 一方、広告の世界で「クリエイティブ」と言えば、広告コピーと呼ばれる耳目を集める短文や、画像(静止画、動画)をもっぱら指します。昭和時代には「いい日旅立ち」のような国民的名コピーが少数作られ、享受されていた感がありますが、デジタル化の進行により、検索連動広告に付与する10数文字のコピーなど、1企業でも同時に大量に投入され、効果次第で頻繁に書き換えられるようにもなりました。

 フェイスブックのソーシャル広告に代表される「狭告」では、クリックされるか否かは画像次第(画像によってクリック率が7〜8割も左右される)とも言われます。目を引きさえすれば良い、と割り切ってしまったのか、社会人向け講習会の広告画像が女性の水着写真になっているのも見たことがありますが、これは行き過ぎ。クリックした後で「騙された!」と思われては逆効果でしょう。

 正攻法、すなわちソーシャル広告の目的や、「こんな人たちにクリックしてほしい」というターゲットを前回記事のように綿密に考え、ターゲットの目線で興味を引きつつ商品、コンセプトに関連ある画像を選んで調整していく、という作業はクリエイティブです。商品知識に精通した人が必ずしも画像選び、作画デザインを得意とするわけではありません。そこで最近では、後者をクラウドソーシングする「ReFUEL4」というサービスが立ち上がり、注目を集めているようです。「作画デザインをする人」と「画像を選ぶ人」を分けることでソーシャル広告作成の効率化を図る、という狙いから生み出されたサービスであると言えます。

地域の健康増進を支援する調剤薬局のクリエイティブ

 前回記事「実践! 下町商店街の活性化に「狭告」を活用  〜 既にそこにあるビッグデータとの対話(その4)」から、課題2を再掲いたします:

課題2 そこで採用した広告クリエイティブ(画像と文章)を提示し、それらを見たら、思わず、自分の潜在顧客がクリックしたくなる理由を述べてください。また、クリックしてフェイスブックページに移動したときに、納得、満足していただくには、ページにどんなコンテンツや機能(アプリ)が求められるか、2,3挙げてください。

 今回の記事で最初に登場するのは、法政大学大学院イノベーションマネジメント研究科・今年度『ソーシャルメディア論』受講生の新田慶子さんです。

 彼女のビジネス定義、事業ドメインはこうなっています:

* ビジネス定義

地域の健康を見守る機能を持った調剤薬局を開局する

 そして、調剤薬局業界の事業環境を、独自の問題意識を通して簡潔に展望した上で、上記事業ドメインを踏まえた差別化ポイントを次のように訴求し、ソーシャルメディア活用のスタンス、目的を明確にしています:

* 将来のビジネスについて

 全国の調剤薬局は5万店舗を超えているが、上位5社のシェアは7%という極めて細分化された市場となっている。また、究極の立地産業と言われており、顧客のほとんどは立地だけで調剤薬局を選択している。そして最近は、規制緩和によるドラッグストアやコンビニなど、異業種からの調剤参入が競争を激化させている。

 現在の調剤薬局は立地の良さや、買い物ついでに行けるなど、利便性追求の方向に進んでいるが、本来の薬局は地域に根ざし、地域の人々の健康を見守る機能を果たすべきである。その本来の機能を備えた、治療ではなく、健康になれる薬局を造り、拡げていくためにソーシャルメディアを活用する。

 そのためにはまず、構築するフェイスブックページに、該当する地域の住民から「いいね!」をたくさん獲得すること。次に、彼らにリピーターになっていただくべく良質なコンテンツを充実させていく、という基本方針を描きます。

 初めてこの調剤薬局のフェイスブックページを目にする、日頃から健康に特段の関心があったり将来の健康不安を抱えている人々に「おや、何だろう? これは私の健康増進のヒントを与えてくれるページではないかな?」と思わせるクリエイティブが期待されます。そして、一度「いいね!」してくれた人々のタイムラインにも、クリックして再訪してくれそうな興味深い、アイ・キャッチできる画像を定期的に供給していく必要があります。

「元気」「安心」感性に訴えるイメージを提示

 ターゲットの属性については開業予定地域、自分の身体・健康に特に関心を持ちやすい年齢に絞るなどして広告の費用対効果を上げることなどが考察されました。問題の「趣味・関心」については試行錯誤、すなわち、推定リーチ(ターゲット属性の人数の総和)とにらめっこしながら調整した結果、次のような初期セットとなりました。

*広告ページのターゲットについて

 - - - 中略 - - -

 ターゲット層の趣味、関心は医療、看護、科学、農業など、広くヘルスケアに関連する分野と、ヘルスケア関連以外に新聞、本、雑誌、漫画または電子書籍など、情報に興味を持つ層も含めた。また、トライアスロンやボディビルなど長期間に身体を作ることに関心がある層は、最適な栄養の摂り方や身体のメンテナンス等の情報を必要としているため設定した。以上のようなターゲット層に薬局が健康をサポートする機能を担うところであると認知してもらい、立地以外の条件で調剤薬局を選択し、かかりつけ薬局を持つ ことを促したい。

 既存薬局との差別化では、「立地以外の条件で調剤薬局を選択」というのがポイントです。すなわち、病院のすぐ近くに立地すれば安泰という既存の調剤薬局のスタンスから大きく差別化し、地域住民の健康を見守るというミッションを果たす新概念の薬局を目指すと明確に示すことが、「課題2」に答える主眼となります。

 リアル店舗の看板に取って代わる広告クリエイティブや、ページのバナー画像としてどんな画像を用意したら良いでしょうか。このあたり、論理と感性が見事に調和した画像作り、画像選びを行う必要があります。新田さんはどのように選択を進めたでしょうか。

*画像  元気になれる、心地良い、安心できるイメージの画像を(複数)選択した。

・元気がでるイメージ

ビビッドカラーの錠剤で目を引く、元気なイメージ。薬剤情報以外に、何か元気になれる要素がありそうに感じさせる。


 最初は、赤系統の多い、血色の良い元気なイメージで、アイキャッチと目標イメージ(“To Be”image。抽象的ですが)を狙う、ということのようです。目標イメージ重視であれば、

ジョギングして楽しそうにしている人の笑顔など、「自分が元気になったらこうなりたい」という目標自己イメージを未来の鏡のように見せてあげるテもありますね。

と講評しました。

 次は、薬のイメージから日常生活に視点をシフトします:

 カプセルの中の新鮮な果物が健康で元気なイメージ。薬の専門家というだけでなく、健康全般に良いヒントをもらえると思わせる。


 感性に訴える効果は十分認められそうです。そこで、論理で補完しました:

一般向け、40歳代以下向けには結構と思います。50代以上や、糖尿の家系ならもう少し若い層でも、流行りの糖質制限食を実行している人もいるので、彼らにとってのフレッシュで健康的なもの、例えば糖質のごく少ない野菜や、新鮮なイワシ(DHA!)を並べたバージョンもあると良いでしょう。

店舗やスタッフの好イメージを訴求する

 次は、店舗や店舗のスタッフのイメージを提示して、安心して健康相談できそう、と意識してもらう画像。スタッフと客、スタッフのみ(客視点)、の2点です。

・安心できるイメージ

 何でも相談できる薬局のイメージ。普段は聞きにくいと思っていることを気軽に相談できる薬局を思わせる。



安心して相談してくださいというイメージ。この薬局は頼れると感じさせる。

 これについては、やや辛口の講評を添えました:

安心のイメージは人によって随分違う、難しい課題と思います。多くの試行錯誤が必要となるでしょう。

 スタッフの視線から見て、心からリラックスした笑顔で安心して相談している自分の姿が映っている画像も良さそうです。動画だけでなく静止画も、誰の目線なのか、どの登場人物に自分を重ねて感情移入するかという観点で、ある程度論理的に、感性的な効果を予想できることを踏まえた講評です。

 最後は、「心地良さ」を訴求する2点です。

・心地良さのイメージ

 人工的な薬ではなく、自然の感じが心地良さを表現しているイメージ。

[画像クリックで拡大表示]

グリーンと白の錠剤が安心と心地よさをイメージ。

 生薬、天然成分のイメージ、そして、1点目とは対照的な中間色、自然な色合いで身体に良さそう、と感じてもらえそうな写真の選択。心地良さはどちらかというと内服するものよりも、自分を取り巻く環境、英語でambience という言葉が示すあらゆる外部要因のイメージを取り込んだ方が良いかもしれません。

 実店舗では、話し声が心地よく響くような音響設計、ノイズさえも心地良く、静かすぎないことでプライバシーは守られる感じ、匂いも心地良いものを目指すべきでしょう。店舗の快適さをイメージさせる画像には多くのバリエーションが有り得るので、薬局に限らず国内外の様々な優れた快適店舗の画像を参考に、実店舗と乖離し過ぎない良い画像を選択すること。これは多種多彩な商材を扱う店舗全般にも通用する、クリエイティブ画像選択のコツの1つになるでしょう。

期待されるコンテンツはヘルスケア情報

 課題2の後半、「いいね!」してくれたアクセス者が満足し、継続的に訪問し、新規投稿にも「いいね!」やコメント、シェアしてくるようなコンテンツはどんなものが期待されるか、新田さんはどのように調査分析、考察したでしょうか。

*広告をクリックして納得、満足していただくための、コンテンツや機能(アプリ)

 参考のため、他の調剤薬局のフェイスブックページを確認したが、ほとんどが薬局内でのイベント(飲み会関係)の写真などで占められ、ヘルスケアに関する情報がタイムラインになかった。最も多くフェイスブックページにいいね!を獲得している調剤薬局(グローバル薬局、フェイスブックページのいいね!は8147件)は、タイムラインにヘルスケア情報を掲載していた。

 地域住民の健康をケアする調剤薬局のフェイスブックページにはヘルスケア情報が欠かせない。タイムラインには季節ごとのヘルスケア情報などをタイムリーに掲載し、Q&Aのアプリなどで探したい情報が検索できるようにする。また、日々の食事内容を入力すると、不足している栄養を表示し、何を食べると良いか、また効果的なサプリは何かを表示できるようなアプリがあると良い。

 以下が私のコメントです。

反応を見ながら、日々さらなるアイデアを出し、工夫をしていってください。コンテンツの蓄積は大変な財産になります。リピート客の確保には、「今日は何の日」などの様々な蘊蓄系の蓄積や、時事ネタなどをコンスタントに効率よく提供していく方策にも思いを巡らしてみてください。

 以上の抜粋以外にも様々な考察、企画、実習などを経て、新田さんは薬局神無月というフェイスブックページを、実店舗の開局に先立ってオープンしました。上記レポートの提出後も、昨今急速に関心の高まっている低糖質食についての重要な情報、健康上気になる情報をコンスタントに投稿されているようです。その記事内容にふさわしく、美しく興味深い写真を添えて、思わず目を向けたくなる記事が並んでいます。

商店街フェイスブックページの人気コンテンツ

 前回登場した、北村咲子さんたちが運営する、東十条銀座商店街フェイスブックページのクリエイティブは、どうなっているでしょうか。せっかくですので新田さんとは棲み分けて、広告クリエイティブでなくオーガニック、すなわち、フェイスブックページのタイムラインに掲載され、購読者(ページ全体に「いいね!」した人)に流れる記事の写真をご紹介します。

 複数のスタッフで対応しているだけに、全体の統一感を意識して出すべく、シンボル・キャラクター犬、ラブちゃんのイメージをバックボーンに持たせているのが大きな特徴です。特に着ぐるみ制作プロジェクトについて、前回記事に掲載した設計図面から、制作中の工場の様子、そして、完成品の写真が掲載されています。 ずーっと追っかけていた人は、お披露目の日、『12/7(日)』と『12/21(日)』午後に商店街をラブちゃんと歩き、ラブちゃんと握手して記念撮影したくなってしまうことでしょう。

 ラブちゃん以外は、アーケードなし商店街のメリットなどの蘊蓄的な記事を除けば各店舗の主力商品、目玉商品や名物(店主?)をフィーチャーした画像、紹介文で記事をまとめています。例えば、初期(「いいね!」数がまだ50未満)の段階で、広告なしで242人にリーチしたコンテンツは神谷珈琲のものでした。下記のように考えて投稿した結果が「吉」と出たか否かは、インサイトと呼ばれる、リーチした人数、本投稿への「いいね!」数、コメント数、シェア数により、評価されます。

◆4回目の投稿 9/7(日) 商店街店舗アンケートを実施し、より良い商店街になるための努力をしていることをお知らせした。個別の店舗が登場しておらず、森を見て木を見ていない印象を読み手に持たれぬよう、商店街の店舗を初めて登場させた。商店街アンケートにてFacebook掲載に積極的にOKの店舗を発見できたということがこの企画の源である。記事の珈琲店は、我々が広告を行った層を含む30代〜50代のお客様の獲得に力を入れているとのことだった。コーヒーというのは、普段は商店街を利用しない男性をはじめ多くの方に響きやすいということで、トップバッターには最適であったと考える。
図 9/7(日) 実施4回目投稿の内容とインサイト(9/8 10:00 現在)

 11/10夜の時点でインサイトを見てもらったところ、神谷珈琲の投稿のエンゲージメント(読者によるアクションの全体)は次のようになっています。

  • いいね!    57件
  • コメント     5件
  • シェア      0件

 なお、私の友人で、フェイスブックはまだやっていないけれど、Google検索だかで上記の記事を見て、割と近所なので行ってみた、ログインできていれば「いいね!」した、という人もいました。神谷珈琲については後日、2杯目は半額、という印象的な写真入りの記事でフォローアップし、「2度びっくり、2度美味しい」ことで記憶に刻まれるような配慮がなされています。人は、3度接して好感が続いていれば実際にその商品・サービスの入手に動く、と言われます。適度な間隔を置いて、店員さんやお店の雰囲気に絡めるなど、また一ひねりした内容の3度目の投稿をすることで、商店街の必須アイテムとして神谷珈琲の認知を得ることができるようになるでしょう。

 個々の商店、商品の投稿記事をもう1つだけ。投稿後ほどなく多くの人にシェアされたおかげで、多数にリーチした記事を紹介します。伊勢屋さんのたい焼きの記事です。


 この記事が、広告なしで、ほかの個別商品紹介の投稿の数倍も多くシェアされ、数倍も多くの人にリーチした理由、原因は何でしょうか? 率直な評価としてこれは、たい焼きを大切そうに両手で持った、店主さんの最高の笑顔のおかげではないでしょうか。このように、売り手側のポジティブな気持ちをストレートに表現する画像というのが、存外、ポジティブな反応「美味しそう! 自分のタイムラインにも載せたいな(友達にも見せたいな)」を引き出せるということは覚えておいて良いと思います。

 後日、実際に支援スタッフがお店に足を運んでインタビューしたところ、このフェイスブック記事を見て買いに来ました、と申告してきたお客さんはさすがにいなかったようです。しかし、いつもお客さんの流れ、顔を見ている店主さんから、見たことのない新顔のお客さんの比率は明らかに増えたようだとのコメントは得られました。

 今後、手軽にソーシャル経由の訪問数の目安を得つつ、何より訪問を増やすためには、個別店舗ごとのチェックイン・スポット登録を行うこと、そして、チェックインを増やすためにスタンプラリーの電子版・オンライン版としてのチェックイン・ラリーを企画したり、もれなく適用される割引サービスをチェックイン・クーポンで実現する、などの施策が活用可能です。

競合他社との常時比較が可能に

 フェイスブックページの管理者になると、上記「インサイト」の数字が見えるようになります。そればかりでなく、競合企業のページやレファレンスとしたいページを複数登録して、ページへの「いいね!」数(ファン数)、その週単位の増減、今週の投稿、今週のエンゲージメント(いいね!、コメント、シェアの合計)を常に比較表示することができます。

 自社フェイスブックページが登録している競合ページの一覧を公開してくれる会社はほとんどありませんので、貴重な事例として、東十条銀座商店街のレファレンス・ページ一覧をお預かりしてきましたので、参考までにご紹介いたします:


 ここ数回、生データやユーザーの反応(インサイト)と対話しながら、ビッグデータを間接的に活用する話題を取り上げました。まだしばらくは、ソーシャル・リスニングや投稿を中心とした新しいマーケティング手法の話題を続けようと思います。特に、「いいね!」した人のみに見せるページやアプリの特典、ポイント等をインセンティブとすることが11月5日以降、禁止されたこともあって、良記事や魅力的な写真を載せるという正攻法がますます重要になっています。

 そのため、投稿されたテキストを解析する潜在ニーズも増大していると感じます。そこで次回以降、人間に代わって投稿を読んで何らかの判断をするサービスの先駆的な事例(例:シャチクノミカタ)などをご紹介してまいりたいと思います。


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